【曲・CD紹介】ショパン:ピアノ協奏曲第2番ヘ短調 Op.21【定番・初心者におすすめ】

小学生のときからクラシック厨で、友達がバンドやアイドルのCDを買っているのをよそに、お小遣いをはたいてクラシックのCDばかり買っていました。

そんな中から好きな曲、好きな録音を紹介します。
これからクラシックを聴き始めたいという初心者の方々にもおすすめできるものばかりです。

私自身がただの愛好家で、楽曲の細かい説明は苦手ですので、感想以外は大部分をウィキ先生から拝借しています。

 

曲の概要 ショパン:ピアノ協奏曲第2番ヘ短調 Op.21

キーワード:片思い・繊細・感傷・民族舞曲

「ピアノ協奏曲“2番”」として出版されていますが、1番より早く書かれています。ショパンは当時20歳。

ショパン初めての大作で、1番ホ短調が「かっちり」「重厚感」というイメージならば、こちら2番へ短調は「自由」「個人的」なイメージ。
特に第2楽章ラルゲットの中間部では、ショパン青年の恋煩いが全面に吐露されているなど、感傷的な雰囲気が全体に流れています。もう一つ大きな魅力が民族色です。特に終楽章では、1番ホ短調と違って主題が短調で展開されますので、より民族色・そして感傷を色濃く感じます。

第1楽章

しょっぱなからショパンの「病み」ようが伺えます笑。
明らかに元気のない主題の始まり、そして問いと答えのような特徴的な動機が続き、やりきれないメロディーが続きます。

ショパンの協奏曲は2曲ともですが、序奏が長いです(珍しいことではありませんが)。ピアノがなかなか登場しません。
そしてこの2曲、オーケストラ書法に未熟さが見られるそうです。
作曲のことはよくわかりませんが、たしかに序奏の4分間、少し退屈なんですよね、笑。

しかしショパンの神髄は、満を持してピアノが登場し、オケで聴くと退屈だったメロディーをピアノが再現した途端、フッと生命が宿ることなんです。
こんなに美しいメロディーだったのか、と、「ピアノで演奏するための」メロディーだったことに気付かされる訳です。まさにピアノの詩人!
ピアノソロが名人芸を披露するカデンツァはありませんが、それ以上にピアニスティックで聴き応えのある曲です。

第2楽章

「この楽章は、当時ショパンが恋心を抱いていた、コンスタンツィヤ・グワトコフスカへの想いを表現したと友人ティトゥス・ヴォイチェホフスキ宛ての手紙で述べている。」(Wikipedia

この楽章が一番好きという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
3部形式、主部のメロディーはとにかく美しい。
陰の見える1楽章から打って変わって夢の中。片思いの相手との楽しい時間を思い出して書いたのでしょうか。

しかし、楽しいだけじゃないのが恋愛です(←誰)。
中間部は一転して、焦燥感あふれる弦楽器のトレモロの上で、不規則なユニゾン(両手で同じ音を弾く)で苦悩・懊悩を吐露します。もう自暴自棄とも感じられるほど。
ここが本当に、聴いている方もツラい、、、胸がえぐられます。話聞くよ?
ウィキ先生にはレチタティーヴォクラシック音楽の歌唱様式の一種で、話すような独唱をいう。)風と書かれています。ロマン派の時代とはいえ、こんな革新的な表現をしたショパン青年には脱帽です。

第3楽章

1番ホ短調は明るい終楽章なのですが、こちらは短調で始まります。
引き続き感傷的であると同時に、民族色が加わります。3拍子で舞踏感も増します。
曲としては非常に快活で、華麗な装飾も施されキラキラしているのですが、どこか物悲しい、恋煩いを断ち切れない青年の心中が見て取れます。このバランス感覚がほんとに最高。

終結部はホルンのファンファーレから、明るく締めくくられます。ここのピアノがめっちゃかっこいいんです。

 

録音の数などを見ても、知名度では1番に劣るんだと思いますし、完成度ももしかすると劣るのかも知れません。
しかし、若いショパンが残した非常に奥深い、ステキな作品です。

おすすめCD

この曲を初めて聴くという方にもおすすめできる、定番のCDを紹介します。

ツィマーマン×ジュリーニ(指揮)×ロサンゼルスフィルハーモニー管弦楽団(1979年録音)

ツィマーマンの演奏を初めて聴いたのが、このショパンの協奏曲でした。ツィマーマンには珍しく(?)2回録音を残しています。同郷ショパンの傑作だけに、思い入れがあるのでしょうか。

彼の演奏を一言で形容すると「作り込み」。
一音一音、機械で微調整したかのような完成度です。

そして、完全無欠でありながら機械的ではなく、むしろ真逆、みずみずしい、情感豊かな、そして2楽章なんかは超幻想的です。
ショパンコンクールを18歳で優勝からわずか3年後の録音、圧倒的完成度に若さがノッた奇跡的な演奏だと思います。すご過ぎて草。
一番のおすすめは、と聞かれたら迷わずこのCDを挙げます。

彼の弾き振り盤もあり、こちらも素晴らしい決定盤です。

ルービンシュタイン×オーマンディ(指揮)×フィラデルフィア管弦楽団(1968年録音)

私がこの曲を初めて聴いたのが、このルービンシュタインの演奏です。
調べて分かったのですが、御年80歳越えの演奏!
苦悩する若者ショパンを老成したルービンシュタインが抱擁するような、渋い語り口です。

ルービンシュタインは、1958年の録音も残っていますが、こちらは打って変わって刺激的な演奏で、一聴の価値ありです。

ブレハッチ×セムコフ(指揮)×コンセルトヘボウ管弦楽団(2009年録音)

ポーランド出身のピアニストが3人続いてしまいました笑。
ショパンは、あまり甘ったるくても胃もたれするし、かといって抒情性が売りみたいなところがあるので、バランス感覚が難しいんだと思います。
その点、同郷の理解なり、東欧の冷たさみたいなものがキーになるのでしょうね。妄想ですけど。

その点、最も「ショパン弾き」っぽいのがブレハッチでしょうか。「ショパンの生まれ変わり」と称されているとかいないとか。細身で繊細なお顔立ちもショパンを彷彿とさせると言われれば、そうかもしれません。

そして虚弱そうな見た目とは裏腹に(失礼(ショパンは虚弱だっだそう))、演奏の完成度はすさまじいです。個人的にはツィマーマンと双璧です。ツィマーマンが「陽」だとすると、ブレハッチは「陰」代表みたいな。そこがまたショパンとマッチします。

圧倒的な技術、ロマンチックでごまかさない、それでいて若き日の苦悩や爽やかさを兼ね備える、そんなバランス感がとれた演奏です。一言で言うとセンスがいい(雑)。

ガルシア(ピアノ)× ボレイコ(指揮)×ワルシャワフィルハーモニー管弦楽団(2021年ショパンコンクール本選)

MARTÍN GARCÍA GARCÍA – final round (18th Chopin Competition, Warsaw)

ほんとはこの間聴いた公演の演奏が一番なのですが、こちらもやっぱり素晴らしい演奏。いま聴き返すと、いくらかコンクール向けにまとめてあるような気がしますが、それでも変わらず甘美でダンサブルな演奏です。3楽章では体が自然と動いてしまいますし、演奏姿が愛らしい。鼻歌もばっちり収録。

 

知名度は1番に劣るとはいえ、協奏曲全体では人気のある曲ですので、音源はたくさんあります。
ぜひお気に入りの演奏を見つけてみてください。

【2022.10.9】@北九州ソレイユホール チョ・ソンジン×サー・サイモン・ラトル×ロンドン交響楽団 公演感想

10月9日(日)北九州にて行われたチョ・ソンジン(ピアノ)、サー・サイモン・ラトル(指揮)、ロンドン交響楽団の公演に行ってきました。

公演に行かれた方とも、行かれてない方とも、感動を共有できたら嬉しいです。

 

チョ・ソンジン×サー・サイモン・ラトル×ロンドン交響楽団

公式HPから

この字面からして、テンション上がりませんか!?笑
こんなトリオが日本で聴けるなんて。。。しかし、このトリオ勢ぞろいは今回の北九州公演だけ。しかもチケットの価格が。。。

コンサート行くぞ第1弾にしてはかなりのハードルでしたが、魅力的な主演者陣には抵抗できず、チャレンジしてきました。

北九州国際音楽祭HP

北九州国際音楽祭のオープニングイベントなのだそうです。
ロンドン響のみなさま。イギリスの香り

チョ・ソンジン(ピアノ)

私はしがないピアノ好きなので、一番のお目当てはこのお方。韓国出身、1994年生まれのピアニスト、チョ・ソンジン。浜松国際、そしてショパンコンクールで優勝しています。

サー・サイモン・ラトル(指揮)

指揮者やオーケストラの良し悪しは、正直よく分かりません笑。どんなところを見て楽しむのでしょう。皆さんの楽しみ方を教えてほしいです。

そんな私でも、この方のお顔とお名前は知っています。有名なピアニストとよく共演されていて、アルバムのジャケットに載っているお方です。イギリス出身の指揮者。「サー」が与えられているそうです。かっこいいですね(薄い)。ロンドン交響楽団では音楽監督をされているとか。

ロンドン交響楽団

上述のとおり、あまり詳しくないのですが、プログラムにあるエルガーも振っていた、歴史のあるオーケストラのようです。ベームバーンスタインアバドなど、私でも聞いたことのある名前が連なっています。

ロンドン交響楽団HPから
https://lso.co.uk/orchestra/history/title-holders.html

プログラム

ワーグナー:楽劇「トリスタンとイゾルデ」から 前奏曲と愛の死

白状するとワーグナーはほぼ知りませんが、この曲は聞いたことがありました。
なかなか解決されない音が延々と続きます。延々とです。タイトルから想像するに恋物語なんでしょうけど、どんな物語なんでしょうか。もっと大人になったら理解できるのでしょうか。

ラフマニノフパガニーニの主題による狂詩曲 Op.43

!個人的メインイベント!あのチョ・ソンジンが目の前に、、、という感動で序奏から大興奮。そして改めてかっこいい序奏だなあと再確認。この曲かっこいいですよね!ほんとに

演奏に関しては、こんなド派手な演奏もできるんだと驚きました。勝手なイメージで、わりと小品が似合うというか、優等生的なイメージだったのですが、このラプソディは実にスリリング! 速めのテンポで快活に、バリバリと、アグレッシブに弾き進めていきます!めちゃ意外!どんどん進化しているんだなあという印象でした。

そして夢のようなロマンティック。17変奏、少々不穏な、次の変奏への助走で心臓がバクバク。そして、お待ちかねの18変奏に到達。。。ピアノソロ。。。とにかく弱音がきれい。。。結構後ろの方の席だったのですが、すぐそこで鳴っているような、でも耳を澄まさなければ聞こえないくらいの大きさ。ホタルみたいな感じでしょうか(違う)。これも堅固なテクニックの上に成り立つんでしょうね。次第にオケも加わり、ロマンティック最高潮。私の涙腺も限界。ほんとに幸せな2分間でした。

19変奏、オケに現実へ引き戻されます。ここからも華やかな技巧が満載です。その難所をバリバリ薙ぎ倒していくソンジン。しかも、やっぱり速い、、、!こういうスター性も持っていたんですね。かっこよすぎました。

圧倒的なテクニックも健在。あれだけ跳躍したりオクターブバリバリ弾いたりしてらっしゃいましたけど、ところでミスタッチした??終わってみるとそんな感じです。 会場を出た後「さすが、Mr.パーフェクトだねえ」という会話を耳にしました。ハードル上げ上げのあだ名笑。もちろん異論なしです。

アンコール曲(北九州国際音楽祭HPから)

これまた華麗に弾いてくれました!私がイメージしていたソンジンの魅力が全開で、パガニーニとは違う超絶技巧を見せてくれました!こっちの顔もやっぱりステキ(うっとり)。

エルガー交響曲第2番 変ホ長調 Op.63

知らない曲。ですし、エルガーの曲も、イギリスの曲もほとんど知りませんが、「初めて」を楽しもう思い、予習なしで臨みました。

第1楽章、豪華なスタート。イギリスと聞いてイメージする高貴さ、几帳面さが土台にありながら、どこか不思議でおもしろい響き。映画のサントラとかによさそう。堂々とした行進曲の雰囲気と符点のリズムが心地いい曲です。

ただ、ちょっと長い。。。1楽章で20分(全体で1時間)もあったんですね。しかもそこまではっきり耳に残る主題もない。となると、初演で評判が芳しくなかったのもうなずけるような気がします。この曲を1回聴いて理解するっていうのはちょっとハードル高く(、興奮疲れで眠気もあり)、結構聞き流してしまいました笑。なので、2回目を聴きながら感想を書いております。初見でもとても心地いい曲でしたし、聴き込むとさらに良さを噛みしめることができるスルメ曲なんだろうなと想像しています。3楽章スケルツォも印象的でした。

総じて、「気品」「気高さ」を感じる作品で、しかもラトル×ロンドン響という本場の音で楽しめたのは、思わぬ収穫でした。

アンコール曲(北九州国際音楽祭HPから)

  • ディーリアス:歌劇「フェニモアとゲルダ」から間奏曲

さいごに

パンデミック以降、初のコンサート参戦となりました。お財布にはダメージが残りましたが、それ以上の体験ができたと、心底満足しています。しかし、なぜ北九州だけなんでしょうか??思い入れがあるんですかね??

長々と書いてしまいましたが、お読みいただきありがとうございました。

ところで、みなさんは、どうやってクラシックのコンサート情報を集めてらっしゃいますか?
自分で調べてみて、情報集めるのに一苦労でした。お知恵があればお教えいただきたいです!

【2022.11.6】@サントリーホール マルティン・ガルシア・ガルシア ピアノ協奏曲ほか 公演感想

11月6日(日)サントリーホールにて行われたマルティン・ガルシア・ガルシア(ピアノ)、東京フィルの公演に行ってきました。

思い返すとコンサートにあまり行ったことがなく、これからチャレンジしてみようと行ってみたのですが、これがまた素晴らしい体験だったので、これは文章で残さなければ、と思い、もう一つチャレンジしてブログを書いてみました。

公演に行かれた方とも、行かれてない方とも、この感動を共有できたら嬉しいです。

ショパンコンクール第3位 マルティン・ガルシア・ガルシア

お目当てはもちろんこのお方、スペイン出身のピアニスト、マルティン・ガルシア・ガルシア。私が初めて知ったのは、2021年のショパンコンクールでした。他の参加者とは一線を画す、汗だくで楽しそうにピアノと向き合う姿に一目ぼれ。見事3位入賞とコンチェルト賞を獲得されました。

前回日本でツアーをされてたのは知ってたんですけどね、、、行けなかったので、またすぐに日本に来てくれてよかったです!!!楽しみ!!!

▼公式HP
https://martingarciagarcia.com/

プログラム

協奏曲2本。豪華なプログラムです。特に、コンペで演奏されたショパンのコンチェルトに注目。

そして個人的には、サントリーホールが初めて、ガルシアの生演奏も初めて、そしてこんな場所から演奏を聴くのも初めてです。どんな音で聞こえるのかドキドキ

サントリーホール左上の方でした。
なんとファツィオリがあるではないですか!もちろん初めて。

モーツァルト:歌劇「フィガロの結婚」序曲

まずはモーツァルトモーツァルト感全開、何かが始まる感全開でいいですよね。サントリーホールブリリアントな雰囲気にもピッタリ。これから迎える2つのピアノ協奏曲に向けて、とても会場が暖まりました。

そして、この位置演奏を聴くのもいいですね。正面とは違った、オケの中で聴くような音もおもしろかったです。いつもよく見えない楽器が一番近くに見えました。

ショパン:ピアノ協奏曲2番ヘ短調 Op.21

ここからガルシアの登場。ショパンのピアノ協奏曲ヘ短調。2021年コンペティションでも演奏した曲です。

この曲は、ホ短調と比べるといくらか「個人的」なイメージ。ところどころで恋のお悩みが見え隠れ、そして終楽章の民族的な響きがすてきな曲ですよね。

ショパンの協奏曲は、2曲ともツィマーマンの音源を好んで聴いていますが、ヘ短調に関しては、コンペでの若い演奏が楽しみだったりします。ただ弾く人が圧倒的に少ない。。。

その意味で、ガルシアのような演奏家がこの曲を演奏してくれるのはとても印象的でしたね。YouTubeで見たときは、今年こそ2番で優勝するのでは、、、と思いましたが、やはり難しさがあるのでしょうか。しかしコンチェルト賞は獲得されましたので、素晴らしい演奏だったのは間違いないですね。

ここでガルシアの魅力

協奏曲の感想ついでに、初めて生で聴いたガルシアの魅力を書いてみます。

多彩な音・表現

まずこれ。表現というかデュナーミクの幅、音の多彩さがえぐい。ほとんど聞こえないようでいてくっきりと聞こえてくる弱音から、観客(私)の意識を吹き飛ばすほどの瞬間風速を伴う強音まで。しかもこの最強音を全く多用しないんですね、彼は。今回の協奏曲でも、終楽章最後の最後の和音が上昇していくところ(伝われ)の連続和音で、初めてこの音が炸裂しました。一瞬頭が真っ白になり、身震い&鳥肌が立ちました。え?何今の?音???今までそんな音一回も出さなかったじゃない!?演奏時間30分、最後の最後にこんな攻撃が繰り出されるなんて。。。完敗ですm(_ _)m 改めてファンになりました。

鼻歌(ハミング)

そして、話題になった鼻歌ですが、ほんとうに歌っているのが、よく聞こえました笑。今回は舞台そばの席でしたので、いいときにいい席がとれたなと思いました。

 おや、おじさんが公演中に歌ってる?迷惑だなあ... なんだ、マルティンか。
 おや、いま会場の外から悲鳴が!?.... なんだ、マルティンか。

コンペでもこんなに歌ってたんだろうかと想像すると、笑ってしまいます。

のだめ?風間塵?

鼻歌も含めてですが、とても楽しそうに演奏されます。この曲って底抜けに明るい曲ではないんですけどね。しんみりパートも多いし。

今回ずっと後ろ姿を見ていられたわけですが、大きく体を揺らしたり、細かく首で拍を取ったり、椅子の上で跳ねたりと、とにかく体がよく動くこと。特に3楽章は聴いてるこちらが踊りだしそうになりました。踊ったことないんですけど。全体的に「のだめ」ってイメージでしょうか、「蜜蜂と遠雷」の「風間塵」もこんな感じなのかも知れません。

真摯な音楽家

「パッション」「ユーモア」が目に付きやすいですが、非常に真摯な演奏ですよね。そのギャップもまたたまりません。
「どこからそんなメロディーライン見つけてきたん」という仕掛けがあったり、同じパッセージにもバリエーションを持たせたり、オクターブで弾くメロディの上下のバランスが移り変わったり(伝われ)、、、楽譜を読み込んであるんだなあという工夫に満ちた演奏で楽しませてくれます。
インタビュー記事でも、非常に研究熱心で作曲家ファーストな姿勢が書かれていました。ただ感覚に任せた演奏ではないからこそ、これほどユニークな演奏でありながら多くの人を魅了するのも納得ですね。

単純に、とても人が良さそう、愛らしい

そしてほんとに人がよさそう。とにかくニコニコとあいさつをしてくれましたし、最後にも書きますがサービス精神が旺盛!なにより笑顔が最高!笑

本人インスタグラムから。クシャクシャのスタバの紙にアンコール考えてくれたみたい笑

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲5番変ホ長調「皇帝」 Op.73

正直ショパンで大満足でお腹いっぱいでしたが笑、こちらもとてもおもしろい演奏でした。「皇帝」というより、「老若男女から大人気、気さくな若インテリ国王」という演奏(違う)。本人の演奏姿も相まって、非常にダンサブルな皇帝でした。そんなノリノリの曲じゃないんですけどね笑。彼の、音楽へのまっすぐな愛情を後ろ姿から感じ、ひとりニヤニヤしながら演奏を聴いていました。そしてショパンのときより鼻歌が聞こえるというプレミア付き。個人的には2楽章アダージョの高音トリルが好きです。どうやったらあんなに音量抑えて響き渡る音になるのでしょう。

さて、プログラムが終わってしまいました。「ブラボー禁止」なのが惜しいですが、スタンディングオベーション。そりゃそうですよね、会場の誰もがより一層ファンになったことでしょう。 アンコール、一曲でも弾いてくれたらいいな、、、

アンコール・・・なんと5曲!!

アンコールはなんと5曲!!時間が許せばいつまでも弾いてくれそうな感じで、プログラムでは触れられなかったロマン派以降のロマンティックでヴィルトゥオージティ溢れる演奏!!これだけでもプログラムが成り立つほどの充実度でした。

まず、英雄ポロネーズ

会場全体の「きたー!」感が伝わってきました。そしてこのコーダでも炸裂しました最強音。コーダで最後に和音5つ上がっていくところがあるじゃないですか(伝われ)、そこだけギアが上がったんですね、一瞬で。平易な言葉で表現すると「びっくり」するんですよ。だってそれまでそんな音それまで一切使わないんですから。

続いては、スクリャービンのワルツとエチュード、リストの即興ワルツ。シロウトの私には馴染みのない曲たちでしたが、いいんです、今は、マルティンの音さえ聴ければ。帰って復習しよう。。。

マルティンの弾くスクリャービンエチュードは印象的でした。ショパンの曲ではなかなかヴィルトゥオージティは分からない気がしますが、こんなバリバリ弾けるピアニストなんだと知ることができました。そしてワルツ2曲は絶品。Romanticが止まらない

そしてバッハ

その時はこんなにアンコール弾いてくれることは知らなかったので、「ああ、この曲で今日は最後か」という物寂しくも幸せな気持ちで、英雄ポロネーズを噛み締めていました。

再びアンコールに応えてくれると湧き上がる喜び、曲が始まると感じる「ああ、この曲で今日は最後か」という寂しさ・幸福感、そんな揺さぶり攻撃が5回も続くと心はぐちゃぐちゃでした。

4曲目のアンコール、リストの即興ワルツが終わった後は、観客の方が折れて、さすがにもう終わりだろうという雰囲気に。席を立ち会場を出ようとする人がいる中(私は爽やかな疲労感でぐったりしていましたが笑)、マルちゃん5回目のアンコール登場。そしてまたニコニコとピアノの椅子に座ってくれました!

「声出し禁止」の会場からは驚きと喜びの声があふれました。おそらく半分近くの観客がドアに向かっていたため笑、わちゃわちゃと席に座ることに。。。徐々に収まるザワザワ、それが収まるのを静かに待ってくれているマルちゃん、そして徐に弾き始めたのは、、、

バッハの平均律クラヴィーア曲集第1集第1番。

これがもう最高、天才、神。これだけロマンチックを繰り出し続け、最後の最後になんて憎い選曲をするんだ。。。そう考えただけで涙の準備が整い、2小節目にはもう号泣。。。隣にいらっしゃったお姉様もハンカチを取り出し。。。なんだか、形容するを放棄したくなるくらいの、なんというか、カタルシスというか(安直)。

これまでと打って変わって理知的で、それでいてやはり情感豊かなバッハ。

こんな表現もできたのねマルちゃん。。。罪なヤツです。これはもう完全に風間塵。帰って読み返そ。

アンコール曲(サントリーホールHPから)

さいごに

総じて生演奏の楽しさを教えてくれるコンサートでした。ガルシアはこれからも追いかけようと思いましたし、可能な限り生の音楽を聴きに行こうと決意したのでした。

長々と書いてしまいましたが、お読みいただきありがとうございました。

ところで、みなさんは、どうやってクラシックのコンサート情報を集めてらっしゃいますか?
自分で調べてみて、情報集めるのに一苦労でした。お知恵があればお教えいただきたいです!